みずみずしいタッチで、日常感覚の日韓関係が捉えられ、日韓新時代を予感させるオムニバス青春映画『まぶしい一日』。済州島、ソウルと東京、そして仁川国際空港、それぞれの場所での、たった一日の出来事。日本と韓国の若者たちの出会いと成長が3つのエピソードで語られる。

 特筆すべきは、本作が、韓国映画界で活躍することを夢見て海を渡った日本の若者たちの参加を得て、全員1970年代生まれという若い世代の韓国人監督たちが作り上げたことである。日韓の若者が、両国の過去・現在を見据えたうえで、未来志向の映画を作る時代が、ついに到来したのだ。本作は21世紀の日韓映画界をリードする希望の星であり、さびついた感覚だけで日韓関係をみてしまう旧い体質を改善するサプリメントである。

 この未来志向のプロジェクトは、韓国の気鋭の独立プロ〈インディー・ストーリー〉が、戦後60年にあたる2005年に〈日韓関係〉を捉えた作品をという企画で、3人の若手監督に依頼して始まった。監督たちは全員が1970年代生まれで、今後の韓国映画界を主導するであろう有望株。いわゆる〈386世代〉の後の世代である。そしてメイン・キャストはほぼ1980年代生まれという若いスタッフ・キャストが集まった。

 3人の監督は、それぞれのテーマを三者三様のスタンスで、軽やかに、みずみずしく撮り上げた。〈戦後60年記念〉としてスタートした企画だけあり、日韓現代史の象徴とも言うべき「在日」そして「竹島・独島」の問題なども織り交ぜられているが、複雑な日韓関係をシンプルに恋と笑いと友情で描いており、「韓国の若い世代は日本との関係をこのように考えているのか」と嬉しい驚きを感じることが出来る。

 済州島を舞台に、日本から旅行者としてやって来た二人の若い女性が大切なものを発見する第1話『宝島』。主演の森透江と杉野希妃は日本生まれ、韓国で語学と演技を学んだ新人。なお、杉野はキム・ギドクの新作『絶対の愛』にも出演している。監督は、ユ・ジテ主演の『Mirror 鏡の中』で長編映画監督としてデビュー済みのキム・ソンホ。

 日本に行ってしまった母を訪ねようと旅費を貯めるため詐欺を働く高校生の男の子を描く第2話『母をたずねて三千里』。主演はキム・ドンヨン、チョン・デフン。ふたりとも韓国映画界でのキャリアの長いヤング・スターだ。監督は韓国短編映画界のスターとして注目されるキム・ジョングァン。

 仁川国際空港で出逢った言葉の通じない日韓の若者を描く第3話『空港男女』。主演は、日本映画『のんきな姉さん』、『ひとりだち』などで既に主演歴のある塩田貞治と、映画『スキャンダル』やドラマ『春のワルツ』にも出演している韓国の新進女優イ・ソヨン。監督は、2006年に『ケンカの技術』のシナリオで商業映画界進出を果たしたミン・ドンヒョン。

 いずれも、若者たちの日常に日韓両国のかかわりをさりげなくからませている。

 20世紀の終わり頃、韓国はまだ「近くて遠い国」と言われていた。ところが21世紀になると、サッカーのワールドカップ共同開催、テレビ・映画の〈韓流〉ブームと「近くて近い国」になった。しかし、相変わらず歴史認識の違いをはじめ、政治的社会的に未解決の問題も横たわっているのが日本と韓国の関係である。この小さな映画は、複雑な両国の関係にさわやかな風を吹かせてくれるに違いない。『空港男女』でイ・ソヨンが塩田に対して言う台詞「パラム ポロガルレヨ? 風を見に行かない?」はそれを象徴しているかのようだ。



『まぶしい一日』  原題 눈부신 하루 英題 One Shining Day

韓国/2006年/133分/DV Cam/カラー/16:9/Stereo/プロデューサー クァク・ヨンス
エピソード1『宝島』 監督 キム・ソンホ/50分
エピソード2『母をたずねて三千里』 監督 キム・ジョングァン/41分40秒
エピソード3『空港男女』 監督 ミン・ドンヒョン/41分20秒

第10回(2005)釜山国際映画祭ワイド・アングル部門招待(韓国:ワールド・プレミア)
第2回(2005)CJアジア・インディ映画祭招待(韓国)
resfest2005招待(韓国)

<韓国> 製作・配給 インディー・ストーリー/提供 ユニコリア文芸投資/共同提供 ブラボー・エンターテイメント、コリア・エンターテイメント、ウハハ・フィルム、スタジオ夢達/配給支援 映画振興委員会(KOFIC)/共同劇場配給 アートプラス
韓国公開 2006年2月23日(木)

<日本> 配給 シネマコリア/共同配給 キノ・キネマ/字幕翻訳 朴理恵
日本版公式サイト https://cinemakorea.org/mabusii/